スモールトーク。
『スモールトーク』絲山秋子著(角川文庫)
ふら〜っと立ち寄ったBOOK・OFFの書棚でみつけた。
もともと二玄社の自動車雑誌NAVIに連載されていたものを同社が単行本化したもの。
昨年2月に文庫本になったばかりのお古なので250円という立派な価格。
ただ、前の所有者はタバコを吸う男(女)だったようだ。
絲山秋子さんの文章は僕にとって粉末の薬のように喉の通りが悪くて、当時は無視していた。
あれから5年経ったけれどやっぱりつっかえて咽(む)せた。
『スモールトーク』
アルファロメオ145に乗っている女(ゆうこ)の前に15年ぶりに現れた男(本条鋭二)
男はその後、会う度に違う車で現れるというカーインプレッション的なものをラブストーリー仕立てにしたものである。
へたくそな運転の車にむりやり押し込まれたような感覚と「サビ」の部分ばかりを繰り返し聞かされているようで、半分読むのにとても疲れた。あとは惰性で読んでしまった。
ドライブシーンでもけっしてキレイな風景が感じられるわけでもなければ、オイル臭さが感じられるものでもない。それはそれで抜き取ったオイルにできた波紋のようにトローッとしたものが好きな方にはいいかもしれないけれど・・・
なんだか悪い部分ばかり書いてしまったなー。でも好きな部分もある。
ゆうこに捨てられた紺色のアルファ145の姿がやけにリアルで、放置された駐車場でバッテリーが上がり、ツタの蔓が忍び寄る。そして傷口からは錆がまわりはじめている。そんな朽ちていく姿がやけに生々しくて・・・
と思っていると併録されている掌編小説「ダイナモ」では紺色のアルファ145と出会う男の話。これを全く別のお話とみるか、ゆうこの乗っていた紺色のアルファ145とするかは読者の自由だ。
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